【おもしろプロレス巻頭言】
それがおまえのやり方か!
~あるいは合コンとは無縁の「ど真ん中」とは~
先日、『BRUTUS』の「マンガ特集号」にて、おそれ多くもザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさん、そしてこの『電動プロレス』のカバーでもおなじみ、イラストレーターの師岡とおるさんと一緒になって、『キン肉マン』を猛プッシュしてきました。
その対談中、ヒロトさんがこんな興味深い話をした。
「最近、ボクが思うのはさ、星とか月っていうのは輝いて見えるけど、あいつらはただ太陽を反射しているだけなんだよね。アーティストっていう種類の人間もそうで、みんなそれぞれの太陽がいて、その輝きを跳ね返しているんだと思うんだ。
ボクも『キン肉マン』に与えてもらった感動を跳ね返して、ときどきは輝くことができてるのかもしれないなって思うときがある」
そう、月だって星だって太陽と同じように光って見えるけど、あれは自ら発光しているのではなく、太陽光を反射したものにすぎないのだ。
そう考えると、「初代・太陽」はいったい誰なのか?
「たどりたくなるよね。ロックの話になるけど、ボクらが、ローリング・ストーンズがかっこいいと思って、彼らこそが太陽だと思っても、またその先には彼らが好きだったブルースにたどり着く。そのブルースの先には……ってね。
きっと、ゆでたまご先生の向こうにも、太陽としてのプロレスがあるんだと思うし」
そういえば、サザンオールスターズの38枚目のシングル『太陽は罪な奴』のPVには、桑田佳祐が敬愛するアントニオ猪木、大先輩のかまやつひろし、リリース当時桑田が大好きだったというグラビアアイドルの松田千奈が登場していた。
が、これはもしかしたらなんの関係もないかもしれません。
ボクたちにとっての太陽。『電動プロレス』巻頭言的には、それは「プロレスラー」ということになる。
今回は、アントニオ猪木を太陽だと仮定した場合バージョン(つまり新日出身組)のなかから、太陽光を反射したある魅力的なひとつの星にまつわる素敵なエピソードを(イニシャルトークで)お届けしたいと思います。
Xはコワモテのキャラクターで、実際に大のマスコミ嫌い、ファンサービスなんてものとは無縁のレスラー人生を歩んできた。
その気難しい性格ゆえ、他者との軋轢、衝突は日常茶飯事。いつしか彼はフリーとなっていた。
そんなXにある日、芸能畑からやってきたAというマネージャーがついた。Aマネは非常にデキる男で、Xは瞬く間に芸能関係の仕事を連日得るようになった。
芸能の仕事なんてガラではない、だが、山ほどニーズはある。Xはそんな全国区の人気を持つ男だ。
Xの目にAマネのライフスタイルは特異に映った。
なぜなら、Aマネが3度のメシよりも好きなもの、それは「合コン」だったからである。
仕事がはければ、すぐに合コン現場へと直行。Aマネは生粋の遊び人であるからして、お持ち帰りができたかどうかなんて関係ない。とにかく、合コンそのものが好きなのだ。
そして合コン終了後に、野郎どもだけで「かおたんラーメン」へとおもむき、試合後のコメントを出し合う。その行為自体が好きなのである。
すなわち合コンに行った時点でゴール。目的達成。
こんな男をXはそれまでの人生で見たことがなかった。そしておもいきって切り出した。
「なあA、そんなに合コンというものは楽しいものなのか?」
Aマネは答える。
「えっ? すっごく楽しいですよ。でも、言葉であの楽しさを説明するのは難しいですね……。そうだ! 今度、Xさんも一緒に合コンに行きませんか?」
XはAマネからの思いもよらぬ提案に、咳き込みながら笑った。
「ばっ、馬鹿野郎。俺が合コンに行くだなんて、そんな選択肢はありませんよ。ああ、ない。断じてないな、ウン。二度とそんなことは言わないでくれ。でもまぁ……」